D1グランプリエキシビジョンTOKYO DRIFT in ODAIBA 5月23日(土)
初日、古口美範が初優勝!

古口美範選手がお台場初優勝!

「TOKYO DRIFT INお台場」は、2001年から始まったD1グランプリの通算獲得ポイント上位の選手を中心とした、いわばD1オールスターが揃ったエキシビジョンマッチだ。通常のシリーズポイントには関係がないものの、D1グランプリでトップを争う選手たちによるハイレベルなドリフトバトルとなるだけに、見ごたえは十分。今年は5月23日、24日の2日間の日程でそれぞれ単独開催され、両日とも予選と決勝を行なう。
初日となった23日はイベント開催に相応しい晴れの天気となり、日中は真夏を思わせるほどの強い日差しが照りつける厳しさであったが、多くの観客が会場に集まった。
お台場は、海浜公園があり、さらにテーマパーク型の商業施設などが点在していることもあって、休日ともなればごった返すほどの人出で賑わう東京の人気スポットのひとつ。昨年同様、「TOKYO DRIFT INお台場」は、船の科学館駅前の駐車場(青海臨時駐車場)につくられた特設コースがその舞台だ。1500台以上を優に収容できる広大な駐車場に、1万人以上を収容する観客席とコースが設営されるため、通常のD1グランプリが開催される路面管理されたサーキットとは異なり、ストレートの途中にはアンジュレーションがあって走行中の姿勢が不安定になりやすく、さらにはワンミスでクラッシュ必至なエスケープゾーンのないコースレイアウトなど、ウォーターフロントに出現したスタジアム型サーキットの華やかさとは裏腹な、選手たちにとって難しい条件下での戦いとなる。
コースは、ちょうどアルファベットのRの文字を一筆書きしたような、ストレートからアールの大きなメインとなる右の1コーナーがあり、そこからさらに回り込むようにタイトな右の2コーナーが続き、今度は振りっかえして左の3コーナー、さらに左の4コーナーへと続く。4コーナーを立ち上がったところで審査が終了となる。ストレートエンドでリヤをブレイクさせて姿勢をドリフト状態へ持ち込んだら、あとは4コーナーまですべてドリフトでつながった走りとなる。
今年のダンロップワークス勢は、野村謙(ブリッツ)、古口美範(DUNLOPコグチパワー)、日比野哲也(ドルーピー)の3選手がエントリー。昨年のこのエキシビジョンでは、野村が7位(初日)、古口が5位(初日)、日比野が5位(2日目)の戦績だった。各選手とも優勝の圏内へと確実に食い込む攻めの走りを今年も見せる!

豪快に角度をつける古口美範選手の走り

 初日の30台によるエキシビジョンマッチが始まった。まずは追走トーナメントへ出場する単走の1回戦が3つのグループに分かれて行なわれた。単走を2本走り、各自の高い得点を抽出して上位16台が追走トーナメントへ出場できるのだ。なお、1台がマシントラブルでリタイヤとなり、29台で競われた。
最初に登場したのがBグループの古口。その1本目は、1コーナー~2コーナーへかけてのドリフトがやや失速し、迫力に欠けた走りとなる。得点は、97.57点。99点台をマークしている選手もすでにいることからさらなる上積みが欲しいところ。2本目は豪快に角度をつけて1コーナーへの進入に成功。会場から拍手が沸き起こるほどの攻めのドリフトを続け、99.02点をマーク。Bグループを終わってみれば、これがなんと1回戦の5番手のポジションだったため、16位圏内が確定し、早々と追走トーナメント進出を決めた(結果、1回戦9位)。

第2戦オートポリスの好調さをキープしてお台場へ乗り込んだ日比野哲也選手

 最終グループは、通算獲得ポイントでベスト10の選手、つまり、シリーズ戦と同様、シード選手がひしめく。満点の100点をマークする選手もいたほど、各選手とも安定感に優るハイレベルなドリフトを披露した。そんななか、第2戦オートポリスの好調さを伺わせるアグレッシブな走りで魅了したのが日比野だった。進入速度、角度、ラインとも文句なしで、1本目で99.47点の高得点をマーク。堂々の2番手に躍り出た。2本目は1本目以上の攻めの走り! を思わせる1コーナーへの迫力ある進入だったが、なんとリヤのグリップが戻ってハイサイド状態となり、審査員席前のスポンジバリアへフロントから突っ込んでしまう。幸いマシンのフロント部外装に若干の損傷を負った程度で大事にはいたらなかったがヒヤッとさせる2本目だった。結果、1本目が採用され、3位で追走トーナメントへ駒を進めた。

精度が高く安定したドリフトでファンを魅了する野村 謙選手

 最後に登場したのは通算ポイントランキング3位の野村。「練習走行では完全にハマッてしまったとですよ」と、特設コースを攻略する難しさをコメントしていた野村の1本目は、角度、スピード、ラインともにキレイにまとめた走りで、1回戦4番手となる99.4点をマーク。2本目は「教科書どおりの走りだ」という表現が審査員から出るほど、さらに精度の高いドリフトを決めてポイントを伸ばし、99.45点を獲得した。順位に変動はなかったものの、練習走行で試行錯誤した結果を、単走で見事に反映させる、ベテランらしい走りが光っていた。
1回戦を終え、ダンロップ勢は3台とも追走トーナメント進出が決まった。

スピードと角度で黒井選手に勝利した古口選手

 午後に入ってもお台場は真夏のような厳しい暑さが続いていた。そんななかで行なわれた追走トーナメントは、1回戦の上位と下位を組み合わせた対戦カードでスタート。まずは、1回戦9位の古口。対戦相手は8位の黒井敦史だ。どちらもベテランであり、古口のSR20エンジンベースで500psオーバーの180SXに対して、6気筒エンジンを換装した、こちらもハイパワーをほこる黒井のS13型シルビアの対決という、マシン面でも見ごたえのある対戦カードとなった。古口は後追いでスタート。黒井と同時に振り出す古口は、豪快に角度をつける黒井に対して合わせていく。2コーナーまでを有利に運んだ古口の走りであったが、振りっかえしの引き(ドリフトで合わせた走りからいったん後退する)の時間の、若干の長さが影響して勝敗は5:5。続いて先行の走りでは黒井にインを許してしまい、勝敗がつかずサドンデスへと突入した。そのサドンデスでは2本目となる古口先行、黒井後追いで、黒井に1コーナー進入時の角度つき過ぎというミスが出て、古口がベスト8への進出が決まった。

田中選手にベスト8で惜しくも敗れた野村選手

 野村は、手塚 強とのスカイライン対決となった。先行の野村に対して手塚が1~2コーナー間でインに食い込むも5:5のジャッジメント。圧巻は後追いでの野村の走りだった。先行の手塚に対して同時に振り出し、1コーナーの進入からピタリと合わせていく。結果、野村の勝ちが決まった。
ベスト8では、田中一弘との対戦となった。後追いでスタートした野村だったが、1コーナーの進入で超接近ドリフトに持ち込むも、途中で姿勢がドリフトから戻ってしまうという手痛い状況となり、7:3と田中に大きなアドバンテージを許してしまう。続く先行では、ノーミスで走るも逃げ切れず、後追いでのミスが最後まで響いてしまい、ここで敗退が決まった。

新旧トヨタ車勝負となった日比野選手VS時田選手

「お台場はマシンの性能差があまり出ないコースだから好きですね」とコメントしていた日比野。軽さと角度で勝負できるというハチロク×日比野のパッケージングは、1回戦を3位通過し、お台場でも絶好調を思わせた。追走トーナメントの対戦相手は、ZEROクラウンの時田雅義。新旧トヨタ対決というカードとなり、先行は日比野。1回戦で好調な走りを見せた日比野だったが、ノーミスで走るも時田に超接近戦に持ち込まれ、わずかにアドバンテージを与えてしまう。続く後追いの日比野は、1コーナーの進入でフラついてしまい、これが影響して時田のインに食い込めない。惜しくも敗退となってしまった。この後追いでは、進入からまさに“ぶっ飛んでくる”という日比野らしさは、鳴りを潜めたという印象も拭えなかった。しかし、「もっと相手に柔軟に対応する、そんな走りが今日は欠けていましたね。でも、お台場は好きなコースなので、明日はもっといい走りを見せますよ」と、頼もしくコメントしていた。

ベスト8で川畑選手と接触。マシンは大きなダメージを負ったものの、そこから劇的に勝利を収めて優勝した古口選手

 ベスト16でシルビア(180SX顔)を征した180SXの古口。ベスト8の対戦は同じ180SXの川畑真人。どちらも180SXで培ったドライビングテクニックでD1ドライバーとなり、180SXでのチャンピオンを目指すとあり、見ごたえある対戦となった。その1本目は古口が後追いだ。果敢に川畑を追いかける古口に対して、スピードと角度で逃げ切ろうとする川畑。しかし、川畑が止めきれず1コーナーの審査員席前のスポンジバリアに突っ込んでしまい、ドリフトを合わせていた古口はそれを避ける間もなく接触。左サイドを川畑のリヤに当て、Bピラー部を中心に大きくボディが凹むダメージを負った。川畑のマシンも前後を破損したが、幸い、どちらもエンジン、足まわりにダメージがなく、応急の修理をしたのち、2本目を行なった。このクラッシュによって7:3のアドバンテージをもらった古口は、クラッシュが嘘のようにさらに攻めのドリフトを披露。先行で川畑にインを許すも、川畑にアドバンテージを覆されることなく、ベスト4へと進出した。
ベスト4の対戦相手は野村を下した田中。しかし、古口は尻上がりに調子がよくなっていることと思わせる、スピーディで豪快に角度をつけたドリフトでまずはウォーミングアップラン。さあ、先行でスタート、というところで田中のマシンにトラブルが発生。エキゾーストマニホールドが割れており、100%の走りができないとわかった。古口が先行で大きく逃げてアドバンテージ。後追いで田中のインへと終始食い込んだ古口が、自身初となるお台場の決勝へと駒を進めた。
決勝は、ZEROクラウンの時田。1回戦から調子のよさが際立っていた時田だったが、古口もクラッシュの影響を感じさせず、それどころか尻上がりに調子を上げている。お台場頂上決戦に相応しいカードとなった。先行は古口。勢いよく1コーナーへ飛び込んできた古口に対して果敢に合わせる時田が、スポンジバリアに接触して走行を中止。古口もスポンジバリアをかすめたものの先行を走り切って、大きなアドバンテージを得る。続く後追いでは、ピタリと合わせるドリフトで時田のインに終始食い込み、大きなリードのまま、古口が、お台場を初めて征した。
結果、優勝古口、7位野村、9位日比野という、ダンロップ勢の強さを初日のお台場で見せつけた。2日目もダンロップ勢に注目だ。

古口美範選手のコメント
「お台場を優勝できてうれしいです。1回戦を通過して、追走トーナメントの初戦で黒井選手に勝ち、何となく走り方が見えてきました。ベスト8で川畑選手と接触してしまい、マシンにダメージを負いましたが、これで吹っ切れたというか、気持ちよく走れました。1回戦から1コーナーへの進入時の角度を意識して走っていましたが、回を重ねるごとにどんどんよくなりました。(負けないために)シリーズ戦だと後先を考えて走ることも重要なんですが、今回はエキシビジョンなので、そんなことを考えず、とにかく自分もお客さんも楽しめる走りをしようと決めました。それが優勝につながったんだと思います。やはり1本1本を精一杯な気持ちで走ることの大切さを改めて実感しました。シリーズを戦ううえで弾みがつきますね!」

追走トーナメントとなればさらに強さを発揮するブリッツスカイライン

野村 謙選手のコメント
「練習走行で完全にハマッてしまいました(笑)。路面が滑りやすく、3回のうねりがあって、振り出すポイントでもポヨンポヨンとなりますから難しいんです。でも、タイヤがよく粘ってくれました。1回戦では、練習より思い切って角度をつけましたが、アウトに持っていかれる感じがせず、しっかりコントロールできました。タイヤに助けられた感じですね。ベスト8での田中選手との対戦はちょっとやり過ぎました(笑)。明日も楽しく走りたいです」

阿部成人監督のコメント
「今回、よい状態でマシンを持ちこめました。コースがバンピーなので、練習走行でフロントが入りづらいという面はありましたが、セッティングや乗り方を変えたりしていろいろ試しました。そのうち野村さんが手ごたえを感じていたようです。今日はベスト8止まりでしたが、この調子で明日もがんばります。作戦は……雨が降らないことを祈ることです!」
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ニュルブルクリンク2014